陸繋砂州通信 > ツレヅレ > 『オオカミの声が聞こえる』

『オオカミの声が聞こえる』

5月も最後の日

西日本は30℃を超す暑さだったようですね。

函館もいいお天気でしたが、最高気温でも19℃、半袖では肌寒いくらいでした。

洗濯物を干しに庭に出たら、シャクナゲが咲いていました。

何の手入れもしないのに、みずから育って蕾から花へと美しく。

目を愉しませてもらいながら、怠惰なわたしは申し訳ないような恥ずかしいような。

ブログも久しぶりです・・

002003

 

 

 

 

 

 

もっと前に書くつもりだったことを、大急ぎで。

小樽の長屋のり子さんに『オオカミの声が聞こえる』という本を戴きました。

彼女の詩の友でもある児童文学者・加藤多一さんのご著書です。

といっても、今回の作品は児童書ではありません。

はじめてヤングアダルトから大人向けに書いたそうです。

 

自分がアイヌ民族であることに目覚めたマウコという35歳の女性を主人公とする現代の物語です。

物語は、マウコが水族館でアシカの心の声を「聞いてしまった」ところからはじまります。

そこで出会った歳の離れた男性と博物館や史跡を巡り、アイヌ民族の文化や歴史を学んでいく中で、博物館のオオカミの剥製に惹きつけられます。

そこから、霊力のある祖母の教えを仰ぎながら、山奥に住む幻のオオカミとの対話を何度も試み、ついに「恐るべき計画」を実行するのです。

 

アイヌの民族史や北海道史を踏まえつつ、幻想的な味わいもある物語でした。

マウコの計画を手助けする60代の男性や動物園で働く青年、そのガールフレンドの人物造型も魅力的です。

 

序に、哲学者で『静かな大地・松浦武四郎とアイヌ民族』の著者の花崎皋平さんが、懇切丁寧な文章を寄せています。

そこでも触れられていますが、作品中には、アイヌ遺骨問題やチカップ美恵子さんの肖像権侵害事件なども出てきます。

実際の事件や人物を実名で書いておられることに、著者の覚悟を感じます。

滅びゆくものや迫害されるもの・少数者への理解と愛、そして「生命をつなぐ」ことへの願い。

今年80歳の加藤さんの渾身の作品です。

出版は地湧社、長屋さんの紹介なのだそうです。

長屋さんのお兄さまは、いまも根強いファンを持つ詩人の故・山尾三省さんで、地湧社から詩集を出されています。

そういう出会いや縁を得て刊行された『オオカミの声が聞こえる』、長屋さんたちは映画化を希望しているとのことです。

ご興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

オオカミの声が聞こえる

 

 

 

 

 

 

 

(地湧社 1500円+税)