語り残したことを育てて ー『火ノ刺繍』を読む旅

10月1日、台風の影響で開催できるかどうかその日の朝までわからなかった『火ノ刺繍』刊行記念トークin函館「詩人 吉増剛造の旅」、無事開催することができました。

 
吉増剛造さんの乗った飛行機が到着した午後には雨も上がり太陽も顔を見せてくれたものの、当日は市内の幼稚園・小・中・高校すべて休園休校となりましたから、参加者は少ないかもと予想していました。
ところが、開場の5時半よりずっと前に来てくださる方もいらっしゃって、開始の6時前に戸口ギリギリまで並べた席が埋まりました。
 
 
この日のために作った資料と共に、30年前に吉増さんが講演のために自作されたレジュメもコピーして皆さんにお渡ししました。
 

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
第1部は「吉増剛造『火ノ刺繍』を語る」
吉増さんが自在な語り口ですばらしいトークとパフォーマンスを見せてくださいました。
小さい室内だったので、思う存分に動けなかったかも知れませんが、語りは与謝野晶子の声色などもいれて、それはもう自由闊達に想いのままに飛翔されたと思います。
さすが55年、ことばで生きてきた詩人だと感銘を受けました。
第2部は吉増さんと番場の対談「詩の旅、詩のことば」
函館の関わり、啄木のことなどから吉増さんの「異語交響」、マリリアさんにいただいた刺繍ポーチなど、私の宝物の手紙やプレゼント、護符のように抱きしめることばも語りました。

そのあと、皆さんから質問や感想などをいただいて、時間となりました。
終わった後も吉増さんの前には長い列。サイン会になりました。
なんと、なんと用意していた『火ノ刺繍』12冊は完売しました!

 
懐かしい人との再会もありました。
高校の後輩で、今はイギリスに住む和子さんとハグ! 彼女は吉増さんが「北ノ朗唱」で函館を訪れたときの二次会、ロシア料理店「カチューシャ」のママでした。
40年前、吉増さんが沖至さんたちとライヴをおこなったというジャズ喫茶Bopのマスター夫妻もいらしてくれました。
市立函館高校文芸部の生徒さんたちも顧問の佐藤先生と共に来てくれました。
市立函館高文芸部は創作だけでなく、郷土にゆかりのある作家や歌人らについて勉強し、それを文芸誌「海碧」に発表しています。また、盛岡で開催される全国の高校生が短歌を詠み競う短歌甲子園に出場するなど(今年もなんと3位でした!)とても活発な活動をしている生徒さんたちです。
今回も、吉増さんの『我が詩的自伝』(講談社)を読んで参加してくれ、文芸を学ぶ高校生らしい質問をしてくれました。
 
とても良い会で、参加してくださった皆さんから当日も翌日も翌々日もあたたかいことばをかけていただきました。
古くからの友人(全盲)からは「あなたの声に棘のないのがよかったね」と言ってもらい、うれしかったです。
いろんなミスや語りすぎたり語り足りなかったり、自分として反省点は多々ありますが、そこで気づいたこと、そこから育ってゆくこともあるかと思います。それらをいつか白布に赤い糸で刺し子するように、紙上に記していけたらと思います。
ありがとうございました。
 
実は写真は始まる前に2・3枚撮っただけだったので、当日ツイッターで無事終了と写真投稿しました。トークの内容については、いずれ個人誌「恒河沙」に採録することにして、ブログは書かないでもいいかな、なんてサボっておりました(笑)
ところが、当日、吉増さんを撮影していた西野鷹志さんからすばらしい写真が送られてきたのです。
生き生きとした吉増さんが映っていました。
白黒なのに、指先についたペリカンインクの紫が蘇ります。
これはブログに載せなくては、ということで2ヶ月ぶりの更新です。

写真を送ってくださった西野鷹志さんは、『火ノ刺繍』を発行した響文社から『風のCafe 函館の時間』というフォトエッセイ集を出されています。
装幀も同じ井原靖章氏、出身大学も吉増さんと同じ慶應義塾大というご縁。

ありがとうございました!
 

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