この一年と、二十年

誕生日と一日です。
一年と一日前の誕生日に詩集「陸繋砂州(トンボロ)」を出版しました。
第一詩集「鬼捲り」から二十年ぶりという、なんとも歩みののろいことでした。
そんな拙詩集に、びっくりするほどたくさんのお祝いの花束やお手紙やプレゼント、
賞までいただき、まあ二十年分の幸福を一年で受け取ったようでした。
 
詩集は、吉増剛造さんに、一番に送りました。
吉増剛造という詩人に出会えたことで、わたしは再び詩を書くようになりました。
十代は生意気なブンガク少女だったわたしですが、
早くに家庭に入って詩作からは遠ざかっていました。
それが、吉増さんの「オシリス、石ノ神」朗唱を聴いて、震えました。
自分のなかで鳴り出すものに驚きました。
その後、吉増さんが選をされていた「ユリイカ」に初めて送った作品が
運良く採っていただけ、さらに、その直後にお話する機会もありました。
わたしにとっては、吉増さんは詩の師というより、はじめて会った本物の詩人です。
その吉増さんから、詩集を送ってすぐに、お手紙をいただきました。
もったいないようなありがたい言葉と、懐かしい文字に涙ぐみました。
 
そして、この一年は深く関わった映画「海炭市叙景」の全国公開、
海外の映画祭での上映とうれしいたよりが続きました。
11月には、DVD・ブルーレイの発売もあり、それを記念してのイベントでは
佐藤泰志の関係者が函館に来てくださいました。
生前の佐藤泰志には、一度も会ったことがなかったのに
泰志を愛する方々にお会いできたのです。
福間健二さんにも、はじめてお会いしました。
 
吉増剛造と福間健二。
二十年で、二人の本物の詩人に出会いました。
この一年を、けっして忘れないでしょう。

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