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映画と歌 『CLOSING TIME』を観て

2月も中旬を過ぎ、日射しは春めいてきましたが、

寒さと雪は、緩まるどころか、いっそうの厳しさです。

日々、雪捨てや落雪を案じ、雑多なことに追われています。

そんな中、家事をしながら音楽を聴いたり

深夜、映画を観るのが楽しみです。

 

一昨日は、映画『CLOSING TIME』(’96 小林政広監督)をDVDで観ました。

先日のブログに書いたCD『とりわけ10月の風が』と共に購入したのですが

CDがとても良くて、数日その余韻に浸ってから、やっと封を切りました。

タイトルの『CLOSING TIME』はTom Waitsの同名アルバムから。

映画は4つのパートに別れていて、それぞれに付されている名も、Tom Waitsのアルバム中の曲名です。

そのせいでしょうか、レコードアルバムのような映画だと思いました。

実際、4つに別れているものの、独立した短編のオムニバスとは違います。

一人の男が遭遇する4つの詩(うた)のようでした。

 

4つの中で、3番目の「LONELY」が好きでした。

1,2番目も映画への愛を感じる、小林監督らしいものでしたが、

3は別格に良かったです。

深水三章演じる彷徨うシナリオライターに髪を切った方がいいのに、という青年との出会いから。

青年の髪は自分で切ったんでしょう、虎刈りのようにまだらです。

上着の袖からフリルが異様に覗いています。

この、ゲイで、エイズで、天涯孤独で、ホームレスという、マイノリティーのなかでもさらに過酷な境涯の青年を北村康(現・一輝)が見事に演じています。

社会から疎外されてきた最底辺の青年が主人公にみせる優しさや、死に瀕しても「人に迷惑をかけちゃいけない」というところは哀切です。

すごくいい脚本・演出だと思いました。

 

監督のまなざしに、ふっと佐藤泰志を感じました。

佐藤泰志の小説にも「頭のとろいあんちゃん」や浮浪者の「陳さん」が出てくるのです。

そして、数日前『とりわけ10月の風が』の最初の曲、「イタリアの天使」を聴いたときに泰志の「市街戦のジャズメン」という10代の作品を想起したことを思い出しました。

まったく作品のカラーもテーマもちがうのに、です。

「イタリアの天使」は都会的でさみしさのなかにも明るさを感じる歌だし

「市街戦のジャズメン」は政治的な箇所や死の予兆も感じさせる暗い作品です。

そのときは、若さとか最初の作品だからだろうと、自分の勝手な結びつけを振り払ったのですが・・

 

以前、福間健二さんが映画『海炭市叙景』の批評で

熊切監督が佐藤泰志と資質が近い(まじめさにおいて)のではないかと書かれていました。

福間さんの文脈では、それは必ずしも肯定的な意味ではなかったかもしれませんが、

わたしは、資質の近さ、まじめさという点で同感でした。

付け加えるなら、ピュアな魂、無名の、底辺にいる人々へのまなざしについても、近いものがあると。

わたしが小林監督の作品に惹かれるのも、きっとそこなのだと、『CLOSING TIME』を観て思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小林政広監督第1作

ゆうばり映画祭’97グランプリ受賞